こんにちは。黒田です。
本日は。
お久しぶりとなります、
今年始まったペコラ銀座の新企画。
「みんなそれぞれ My Story」
第三弾でございます。
では、さっそく
参りましょう〜♪
・・・
お洋服も人生も十人十色
~みんなそれぞれMy Story~
人は皆それぞれの生き方があり、
十人いれば十通りの、美しい色を持つ。
私たちの日常は、
十人十色の想いが、
地球上のあちらこちらで重なり合って出来ている。
十人十色こそが美しく、
それはそれは尊く、
この世の何にもかえがたい、
宇宙の宝物。
十人十色いらっしゃるお客様に、
十人十色、それぞれお洋服をお仕立てすること。
それが、私たちペコラ銀座の日々です。
そんなペコラ銀座の日常の一風景を、
一人のお客様を通してご紹介いたします
本企画。
今回ご協力くださったのは、Tさん(50代男性、公務員)
2018年にPRIMAPROVA(現在このラインは承っておりません)のキャンペーン時に 初めてご来店頂きました、Tさん。
彼のMy Storyとは
・・・
「フィーリングが合うかどうか」
長身で自然体、落ち着き払った静けさの中に感じる哲学的な雰囲気。
そんなTさんはインタビュー当日さらりと白黒を着こなし、いつものように気品溢れる奥様とご一緒の来店でした。
自ら考え抜いて言葉にした想いを、細かくスムーズに語るTさん。その仕草と眼差しからはものごとの真理を見抜くかのような力を感じる。
会話の中で常に思考をめぐらせている様子のTさんは、会話においてふと納得した瞬間には「通じ合った」事に対しハッキリと反応を示す。
奥様は隣で時折頷く、笑顔を浮かべながら。そうして、素敵な間合いをもって、会話に言葉を添える。
仲睦まじいご夫妻はベネチアのカーニバルが大好きだといい、これまで2度参加した事があるそうだ。
Tさんは趣味である写真を撮り、奥様は仮装をし、ご夫婦で中世の雰囲気漂うカーニバル文化を楽しむ。
色彩豊かなカーニバルの世界も、白黒写真で撮る事を好むTさんは「色を取り払った白黒世界の静けさの中には本質を感じる」と言う。
そんな、ものごとの本質を追求するTさんの感性は、
彼の語る言葉の端々から感じられる。
インタビューでは落ち着いた口調でお洋服への想い、
ご自身の考えを語ってくださいました。
・・・
2年前に初めてご来店頂きましたが、ペコラ銀座を知ったきっかけを教えてください。
お店を知ったのは、ウェブサイトの検索です。それまでは、正直知りませんでした。
その時は今の綺麗なページになる前の、昔のページを見たんです。すごくシンプルで、なんだろう、カッコ良かったんです。それで、気になるお店の一つになりました。
そもそも調べ初めたのは、ちょうど50歳になるか、なったかという時期ですが、実はスーツをちゃんと仕立てた事が無かったんです。でも「本物のスーツって誂えるものだ」という意識はずっとどこかにあって、憧れでした。例えば、英国の老舗テーラーで誂えたスーツとかどんな感じなんだろう?って。
50歳という年齢が見えてきて、実際にその年になって。そうしたら残りの時間も見えてくるじゃないですか、スーツを着られる時間も。その時に、「いつか誂えたいと思っていたスーツを、それを今回誂えよう」と決めたんです。
どうせなら銀座で、と思いました。
そこで、「銀座」「スーツ」「仕立て」とか、検索をかけた中でペコラ銀座が出てきた。
ただ、あまりお店の雰囲気とか分からない状況だったので、他のお店も含めてですけど、敷居が高いなと、そう思っていました。
それから、怖さもありました。
やっぱりオーダーで仕立てるなら30万くらいになるじゃないですか。覚悟は決めてるはずなんですけど、いきなり30万でチャレンジするのは怖い部分があるんです。
その怖さというのは「フィーリングが合うかどうか」。
出来上がってくるもの自体はどこのお店でも確かなものが出来上がってくると思うんですけど、「それが、自分のフィーリングに合うかどうか」というのはまた違う話なんですよね。
銀座にもたくさんお店あるじゃないですか。
そのどこかに入ってお願いした時に、洋服の細かいニュアンスの違いや、そのお店のハウススタイルがあるのか、こちらの要望に応えてくれるのか、とかは分からないじゃないですか。
その上、デザインというか雰囲気というか、自分の好みに合うかどうかなんて、実際には全くわからないですよね。
その意味で、お店を選ぶのは結構悩みました。
オーダーで作ろうとは決めていたんですけど、悩みましたね。
悩まれた中で、ペコラ銀座を選んで頂いた理由を教えてください。
大きなお店で、例えばスタッフさんも職人さんも多いところだと、きっと実際に手を動かすキーパーソンの人には直接会えないんだろうなと、思いました。
お店で測ってくれて対応してくれる人と、実際の職人さんは別のところにいるんだろうなと。私の勝手な思い込みかもしれないけど、そんな不安はありました。
で、それだと、結果的に行き違いが出てくるのは嫌だなと思ったんです。
だから「割と小さいところ」というか、職人さん、そういう人と直接話ができるところが良いなと思っていて。
それも一つの要因だったのかな、ペコラさんにしたのは。
あとは、最初にも話しましたが、昔のホームページは、情報が少なかったけど「他のお店とは違うな」と感じていました。
なんだろう、日本の昔からのスーツとは違った、ヨーロッパ・ミラノというその辺の独自のセンスと腕で勝負されてるのかな、という雰囲気は気になってたんです。
最終的な後押しとなったのは、当時の、PRIMAPROVAのページを見て、そこにのってたプライスが比較的「これなら届くかな」というものだったんです。それで行ってみようと決めました。
お洋服に対する想い、初めて「誂える」に至るまでの経緯などお聞かせください。
割と小さい頃から、好きなミュージシャンとか、アーチストとかが着ているスーツを見て「あの服かっこいいな、あの形かっこいいな」とか思ってました。
それから中学から高校くらいの時に、日本でデザイナーズ・ファッションが流行った時期があって、そういう意味では世代的にデザイナー的な洋服には触れる機会もあって、ああゆうの格好いいなとは思ってました。
黒一色でパリコレにチャレンジしたデザイナーさん達とか、凄いなと思ってました。今でも凄いなと思いますけど。
スーツとは少し違う世界ですが。なんだろう、決まった型ではなくて、布一枚で身体にこう、うまく線が合うと、綺麗に見えるんだなって。
素人考えですけど、スーツって完全に三次元の立体を作る世界じゃないですか、それって多分ヨーロッパ的なのかなと。その人にぴったり合うっていうのも、ヨーロッパ的な感じがするんですよ。
それに対して日本って、例えば、着物だと平面の布一枚からその人の身体を包んでいくわけじゃないですか。風呂敷なんかもそうですけど。それって日本独特だと思います。それでまたほぐすと平面に戻っちゃう。
スーツの考え方は、それとは全く違っていて、その人にぴったり合うのは、縫製技術とか、アイロンワークとかで、完全に作り込んでますよね。それってなんか文化の違いだと思うんです。
先ほどのデザイナーさん達がやった、もともとカラフルな世界に対して黒一色で、きっちりしたものじゃなくて、布一枚で被せたようなもので、それでもこういう風に綺麗に見えるんだって。それは、和服のイメージとか、そういうベースが日本人にはあるのかなって思って。それが世界に通用するのを見て、凄いな、面白いなと思いました。
中学から高校くらいは、そういうものを目にしていたので、洋服に興味はありましたね。
スーツという意味では社会人。
社会人になって初めて買ったスーツでの経験は、既製のものを試着をして、例えば私は腕が長いので「じゃあ袖を1cm2cm出しましょうか」と、そこから始まるんですよね。JISの標準体型があって、多少はメーカーさんによってデザインは違うんでしょうけど、基本の形があって。その基本をもとに「じゃあここは出します」とか言われる。言われたまま、そこが合えば良いのかな、そういうものなのかなって思っていました。社会人になりたての頃はそのくらいしか買えないというものあって。
今50代前半なので、当時は30年くらい前。その時でもやっぱり既製スーツが主流でした。「誂える」なんて、それこそ政治家か会社の重役かと言う、そんな感じだったように思います。
ただ、「本当のスーツは誂えるもの」っていうのは、ずっと思ってはいたんですよね。「誂える」という言葉を、どこで覚えたのかは分からないんですけど、そういうイメージがずっとありました。ただ、高嶺の花というか、子どもが行くところではないと感じてました。
30代で転職して、スーツを着る機会が増えました。その時の先輩に「安く出来るから作ろうよ」と誘われて、初めてイージーオーダーというものを経験しました。
そこで初めて、自分のサイズを測ってもらって最初から作ってもらう事を経験しました。フルオーダーとは違うのは分かってるんですけど、既製で「ここを2cm出す」というのとも違うじゃないですか。その時は、まあそれなりに合うので「合ってるのかな」と思っていましたね。今から考えると「合ってなかったんだな」と思いますが。
イージーオーダーを経験すると、今度はお店の人に色々と聞くようになりました。イージーオーダーの「仕組み」みたいなのを色々聞きたくなるじゃないですか。
自分で色々考えてお店の方に質問してましたね。
例えば、「基本となる形があって、それが三角形だとすると、丈を3cm長くする場合は、この三角形をビューっと伸ばして、全体を3cm長くする。その時、中間のボタン位置は1.5cm位置が変わるというイメージですか?」とか。
イージーオーダーを色々試す中で、採寸の質問や仕上がり寸法の決まる仕組みなどについて沢山、質問しました。
でも、「なるほど」と納得することは、あまり無かったですね。
担当する人によっても、仕上がりが違うことも知りました。「昔、仕立てやってたんですよ」と言う方だと、同じイージーオーダーでも少し出来上がりが違うんですよね。
イージーオーダーは随分試したんですけど、結局は満足しきれなかったです。
採寸する人が服の仕立ての仕組みを’理解’している事、服を仕立てる人が着る人の体型や動きを’理解’してそれに対応する技術を持っていることが必要なんだという結論になりました。原型があって、それを引き延ばしたり調整していく仕組みは、特に私のように標準体型からの差が大きい場合、限界があると思いました。
それで結果的にちゃんと「オーダーで誂える」しかないのかなと思って、チャレンジしてみることにしました。
ペコラ銀座での初めてのオーダーでの体験についてお聞かせください。
ペコラさんでの一着目は、紺無地のスリーピースと決めていました。
スーツは柄物も色々経験した中で、やっぱり紺無地が一番格好いいなと今思っていまして、その時のリクエストはそれだけだったと思います。
それで、
最初に出してもらった生地に一目惚れだったんです。
だよね、あれ。(奥さんをチラッと見るTさん)
ちょっと青みがかった光沢のある、SCABALのビンテージだったのかな?
その生地を一番初めに見て、その後他の生地も見せてもらったんですけど、最初に見たその生地が圧倒的に良くて、「生地はもうこれしかない」と思いました。
それで値段を聞いて。
最初30万くらいと言われたかな、確かそれくらいだった。
、、、正直予算オーバーだったんですよ。
最初の予算では、20万ちょっとくらいでもしかしたら出来るんじゃないかなと思ってたんです。
それで相当悩んだよね、一緒に(奥さんの方を見るTさん)
奥様:「そう。一回外出て、お茶してから考えようって言ってね。一度お店を2人で出ました、笑。一時間ちょっとくらいかな、外に出て、お茶飲みながら、カフェで話したね。 」
多分、その時、腹の中では決まっていたと思うんですけど。やっぱり最初、20ちょっとでと思っていたから、30って大きな数字じゃないですか。
それで、悩んだ。
悩んだんだよね。
奥様:「うん。でも、すごく欲しい。って。欲しいなって。ね」
もう少し安く出来るところを探しても、どうかな、と、色々考えました。
お店を変えるというのも、なんか嫌だと思って。
それで、決めました。
その日初めて佐藤さんとも色々お話をさせてもらって、「やっぱり、この人にお任せしてみよう」って思いました。
その時、失敗というかうまくいかないことは、不思議とイメージしませんでした。
ただ30万ってやっぱり大きいなって。
オーダーの難しいのは、「こんなイメージで出来上がりますよ」っていうのは見えないじゃないですか。
そこは、どんな形になるのか、分からなかったんだけど、
もうここは「この人にお任せするんだ」という感じですね。
佐藤英明なら大丈夫と思ってくださった?
そうですね。はい。
奥様:「そう。なんかすごく、信頼できると感じて。なんか、こう、本当に洋服が好きなんだろうなって。ね。」
そう。
「こうです」「ああです」と、必要以上に説明されないじゃないですか。だけど、聞くと、ちゃんと的確にそれに答えてくれる。
膨大な経験と知識があるのに、それをひけらかす訳でもなく、こちらから聞いたり要望したことに対しては、的確な説明付きで、いくつかの選択肢を示してくださる。
なんというか、本当の「プロ」なんだなと思いました。
それで、もう、お任せしよう!そう思いました。
ペコラ銀座でのオーダーのプロセスの中で感じたこと、印象に残っている事などありますか?
初めてのオーダーの時は、採寸があっと言う間に終わって「えっ、これで終わり?」と思いました。
それから仮縫いが初めての経験だったので、楽しみでした。
奥様:「うん。楽しかった~。」
仮縫いは、パンツを最初に履いたんですが、腰回りの感じが今まで経験したことのない感じでした。
凄いなと思いました。
自分の身体に吸い付いてくるような、当たるところが、「面で当たっている」ようなイメージです。ピタッとハマるんだと言う感じで、パンツはパンツで凄いなって。
それで、次に上着を羽織るじゃないですか。
あれを羽織った時はもう、感動ですね。
何故かと言うと、胸から肩周りがピタッと吸い付く感じと言うか、あの感覚は味わった事がなかったです。
胸から肩周りのフィット感、あれは感動ですね。特別な体験。
本当に凄いと思いました。
ここ(胸)から上がピタッとはまって、三次元で、ピタッと吸い付くと言いますか。だから、割と重い生地だったと思うんですけど、着ると全然重く感じなかったんです。
ジャケットはもう、羽織った瞬間に、わあ凄いって。
奥様:「うん。感動してた。」
奥様の目から見ても?
奥様:「もう感動してました。あんまり、こう、表に出すタイプでは無いんですけど、おおって言う感じでした。」
仮縫いの感動の後、出来上がりの納品時はいかがでしたか?
「ああやっぱり、この感覚、この感覚」という感じです。
ラインも綺麗だし、やっぱりなんだろう、綺麗ですよね。どこにも無駄がない。
こう鏡で見た時に、脇の部分とかダブつくところもないし、肩もぴったりしてるのに動いても引っかからない。パンツも含めて全部がぴったりでした。
「これがオーダーなんだ」と思いました。
二着目はスタンダードラインでジャケットをお願いしました。
それは、一着目作っていただいたスーツが、もったいなくてなかなか着れず、本末転倒なんですけど 笑。 プラベートでも普段使いできるジャケットを作りたいと思いました。
印象に残ってるのは、「今回は着丈ちょっと短い方が良いですよね」って、佐藤さんからさり気なく言ってくれた事です。スーツよりも着丈を短くした方が良いかなとは思っていたんですが、言い忘れていたんです。こちらは何も言っていないのに仰ってくれて、プロだなと思いました。
一着目を着た時より、少しゆとりがあるように感じました。ジャケットだからかな? その分リラックスして着られる感じです。スタンダードラインは仮縫い無しでしたが、凄く良くできていると思いました。(Tさんにご注文頂いた当時のスタンダードラインは仮縫いがありませんでした。※現在のスタンダードラインは仮縫い1回付きです※)
いつかは、フルハンドでお願いしたいと思いますね。
「この上があるんだ」って思うと、それはやっぱり試してみたいなと思います。
ちょっとまだ届かないなとも思いつつ、そう言っているうちに時間は経って行って、着られる時間も少なくなってくるから。それこそ、10年とか普通にもつものを作っていただくので、何かきっかけがあればお願いしたいですね。
その後、ペコラ銀座の洋服を着ていてどうですか?
ペコラさんで作ってもらったものを着る時は、良い意味での緊張感とか高揚感がありますよね。気が引き締まって、ちゃんとしないといけないなって。姿勢とか気になります。
それから、何かひとつがよくなると、他もだんだん気になり出すんですよね。
すべてに手が回ってるわけではないんですが、今一番の課題はシャツです。
シャツは難しいですね。
着るたびにクリーニングも少し辛いですし、やっぱりノーアイロンで洗えるのって凄く楽なんですよ。それに慣れちゃうと、中々、良い生地でちゃんとっていうのは。
そうすると、やっぱり便利さと天秤にかけると、既製である程度合ってるもので済ましちゃおうかと思う事が多くなります。
あとは、ネクタイもそうですね。
私ネクタイの結び方は、確か小学校の時に父親に教えてもらったんですが、実は50過ぎてネクタイの結び方を本気で勉強しました。
奥様:「それは違ったの?今までのと」
んん。違うというか、何が正解かは分からないんだけど。結びの大きさとかバランスとか、ちゃんとしないとスーツに負けちゃうんですよね。
奥様:(頷きながら)「ふ~ん。広がるね~。」
あまりネクタイしないんですけど、するときにはネクタイそのものも選びますし、やっぱりスーツに負けないように。
奥様:(笑顔で)「なんか一生懸命しめてるよね」笑
これからペコラ銀座に来ようと思う方へのアドバイスをお願いします。
とにかく、佐藤さんに相談してみることかな。直接相談して、いろいろと話をすることで、自然に方向性は見えてくると思うから。
レディースにも対応可能と仰っていたので、興味のある女性の方も。佐藤さんをはじめ、スタッフの皆さんはフレンドリーだし、素敵な時間と空間ですよね。
特別な体験もできるし。
・・・
今回のMy Story初となるご夫婦揃ってのインタビューは、互いに言葉を交わし合う談話のような空気感ですすみ、スーツ以外にも沢山の興味深いお話を聞かせて頂きました。
そんな楽しい会話から垣間見えた
Tさんと奥様の素敵なお人柄を
ここよりショートインタビュー形式でお届けいたします♪
いつもカメラを持ち歩いてるとお聞きしました。
奥様:「そう写真。写真、撮るの。好きですね。」
そうですね、カメラは30代になってからです。それまでは趣味らしい趣味がなかったんですが、趣味はなんですか?ってよく聞かれるじゃないですか。「じゃあ、写真にしよう」と決めて、カメラを買いました。
奥様:「凄い、こだわりがあるんです。カメラとか、レンズとか。」
カメラで撮る対象は何ですか?
人を撮りたいんですけどね。
奥様:「けど中々、知らない人は撮れないんだけどね。そう、でも、ベネチアのカーニバルが大好きで。」
ベネチアのカーニバル?
奥様:「イタリアのベネチアの、仮面とか、仮装するカーニバルがあるんですけど、そこでは堂々と人を撮れるという。」
そうですね。 ベネチアのカーニバルは、いつからかは覚えてないんですけど、いつか行ってみたいなと思っていて。憧れだったんです。
奥様:「凄く楽しいですよ。私は写真撮るのは途中で飽きちゃうから、どちらかと言うと仮装しちゃうの。誰でも参加できるから。もちろんコンテストとか、そういう催しもあるんですけど、基本は皆好きな格好をして、街を歩いてる。中世の格好とかする人もいっぱいいて、ここはいつの時代?中世?っていう感じ。」
仮面舞踏会とか、ああゆう流れがあるのかと思うんですけど。ベネチアのカーニバルって、仮面をして、その期間だけは、階級や性別など関係なく「みんなで楽しむ」みたいな感じなんです。仮面とか、衣装とか、作って。
奥様:「そうそう。本気で参加してる人たちは、もうそれこそ一年がかりで衣装とか作ったりしてるから、写真はもう‘撮って撮って’という感じで撮らせてくれるんですよ。」
(ここで少しTさんの撮ったカーニバルの写真を見せていただきました。)
写真、白黒が多いんですね、白黒で撮るのが好きなんですか?
あ、白黒好きですね。
奥様:「色が雑音だってね」
そんな感じしません?同じ写真でも、色がついてるのと比べると、白黒の方が静かに見えませんか?
それと、想像力を掻き立てるじゃないですか。
色がついてると答えが見えてるようだし、色って音のような気がして。
好みにもよるけど、あまりカラフルだと、ちょっとうるさいなって。
色がついてるものから、パッと色を取ると、静かになるような。色って、音なのかな、と。
どっちが良いってものではないんですけど。
何においても、すごく本質を探ろうとするのですね。
奥様:「そうなんです。お洋服のことだけじゃなく、なんでもそうなの。そうゆうところはあります。」
なんか、感覚的に感じるものを、考えて、説明したくなるんですよね。
説明できないんですけど。
あ。そうだ。
ちょっと前に、テレビで禅の番組をやっていて、そこで僧侶が「なんでも、言葉にした時点で、その人の背景だったり、教育だったり、宗教観だったり、必ず入っちゃう」という話をしていて。
言葉にした時点でそういうものが必ずついて回るから、そうじゃなくて、もっと身体で感じるものを、みたいな話をしている時に「ああそうだな」と思ったんですよね。
なんでも説明すれば良いってもんじゃないなって、思った。笑
奥様:「でも、言葉にするのも大事よね。言葉にすると、考えがまとまるし。」
うん。ちゃんと、言葉に出来るということは、そのことについて、一定の理解をしてることになるのかもしれないけど。
すごく難しいことを簡単に説明する人って、それをきちんと理解しているから説明できるのであって。
だから言葉で説明するのもすごく大事だとは思うけど、色々感じていることって、説明しきれないと思います。
奥様:「本当に感じてるものと比べたら、言葉の数の方が断然少ない。全部を伝えるのは難しいなって、思うよね。」
・・・
スーツのお話から、洋服への想い、カーニバル、写真、白黒の世界、僧侶の言葉と。Tさんと奥様のお話を伺う時間はたくさんの発見、考えさせられる事に溢れていました。
特に「言葉にする」と言うことにおいては、ペコラ銀座のブログを綴る立場としてはとても身に染みるものがありました。どんなに言葉にしても、ペコラ銀座の洋服の着心地、美しさ、本当の良さはと言うのは実際に「体感して頂くほかにない」と言うところがあるものです。
それでも、ペコラ銀座の洋服づくり、テーラー佐藤英明の想いを綴り、皆さまにお届けする事によって、洋服を仕立てる文化をより多くの方に身近に感じて頂き、この美しい文化を愛で続けていけたらと思っております。
この度は、Tさん、奥様、お二人の貴重なお時間をいただき、
ご協力いただきましたことに深く深く感謝いたします。
素敵なお二人の今後のご活躍を心より応援しております。
本当にありがとうござました。
今後もお客様の素敵なMy Storyをご紹介して参りたいと思います。
どうぞ宜しくお願いいたします。