スコティッシュ リネン。

 

こんにちは。黒田です。

 

5月は1日。

 

本日は、

スコティッシュリネン。

 

 

参りましょう。

 

 

・・・

 

 

 

「あー。。。、、もったいないね。」

 

そんな風に始まったのは、

 

今朝一番の、

ペコラ銀座店主とのやりとり。

 

創業1825年。

スコットランドに残る、

最後のリネンミルが4月をもって閉鎖した。

 

https://scottishlinen.com

 

・・・

 

皮肉なことに、

このミル閉鎖をきっかけに、

スコティッシュ リネンを知った私たち。

 

なくなってから、

その存在を知る無念さときたら。

もう。

 

 

スコットランドに残っていた最後のリネンミル。

そこで196年もの間、

 

積み重ねてきた歴史。

育まれてきた技術。

継承し続けてきた想い。

 

ミル閉鎖とともに、

それらの生き場所は、

未来での可能性は、

あっけなく閉鎖されるのか。

 

 

・・・

 

身体の奥底深くから出るため息。

 

スコットランドで唯一残っていた、

リネンミルがなくなった。

 

今日から、

1日1日が過ぎるごとに、

「過去の歴史」

となっていくのだ。

 

ああ。

スコティッシュ リネン。

 

 

・・・

 

今朝、

この事を知ってから、

 

少しばかり、調べ物をした。

 

ミル閉鎖がきっかけだったけれど、

知りたいと思った。

考えたいと思った。

 

 

スコットランドといえば、

タータン、それからツイード、

そんなイメージだったけれど。

 

実は、

かつてのスコットランドでは

かなり栄えたリネン織産業だったよう。

 

 

少なくとも600年以上の歴史を遡る事の出来る

スコットランドでのリネン織産業が

発展する根拠となったのは、

 

昔のスコットランドにおける亜麻農業だった。

 

スコットランドで作られるた亜麻は

その種から抽出するオイル、

耐性に優れた自然繊維から作られる

糸が重宝された。

 

亜麻農業が栄えるスコットランドで、

丈夫な亜麻糸が生産され、

それに付随して発展したのが、

スコットランドのリネン織の技術。

 

長い歴史あるスコットランドのリネン織業は、

1707年に制定された合同法によって

ますます盛んになった。

 

1720年代には、

スコットランド産のリネンの品質向上を計るために

世界最高峰のリネンを誇るフランスより職人を招聘。

彼らとその家族に土地と住居を与え、

スコットランドの職人は、彼らフランスの職人より

世界最高峰のリネン織の技術を教わったそう。

 

同時期、

リネン織を産業として発展させようと、

リネン商取引のノウハウを教わるために

アイルランドからの人材もスコットランドに招いた。

 

1800年代には、

地域によっては800以上あったという、

スコティッシュリネンのミル。

 

そんなスコティッシュリネンのミルでの仕事は

「炭鉱場に匹敵するほど危険な職場」

とも称された。

 

亜麻の繊維を精製する当時の工程で発生する塵や、

可燃性の高い亜麻繊維を扱うミルにおける火事の高リスクなどで、

危険な労働環境の中であったが、

たくさんの雇用があった。

 

1950年頃まで、

スコットランドにおける亜麻農業は続き、

以後、

スコットランドのリネン産業は徐々に規模が縮小した。

 

スコティッシュリネンのミルは、

徐々に地産のリネン糸から、

輸入のリネン糸を主に扱うようになり、

リネンミルの数も年々減少。

 

ついには、

スコットランドのリネンミルたった1つとなり、

 

その最後のリネンミルは

今年の4月をもって閉鎖した。

 

 

スコットランドで、どうしてリネン?

と思ったけれど。

 

なるほど。

亜麻が豊富に採れた、

地域性によって栄えた産業だったんだ。

 

それにしても、

600年以上も遡る事の出来る、

スコットランドのリネン織の知恵と技術。

 

そのうちの196年を担っていた、

スコットランド最後のリネンミル。

 

 

そのミルはもう閉鎖された。

 

ああ。

 

やっぱり出るのはため息だ。

 

・・・

 

「良い生地はどんどん見つけにくくなっている」

「そもそも、良い生地を織れるところが、残ってない」

ペコラ銀座店主の佐藤英明が

常々呟いている言葉だ。

 

 

歴史と伝統を誇る一つのミルがまた閉鎖された。

 

そんな事を知った今朝から

調べ物をしながら、

想いを馳せて考えた。

 

そうして、改めて思った。

 

仕立て文化を生きる、

私たち仕立屋が担う役割は、

まだまだ沢山ある。

 

仕立屋の仕事は、

お客様のお声を、

美しい洋服に仕立て上げる事。

 

でも仕立屋の役割は

それだけではないかもしれない。

 

私たちひとりひとりが生きる人生において、

何を愛で、

何を大切に育むか、

と言う事を、

 

身体に纏う衣服を通じて

その美しいあり方を

実現して行くことも

 

私たち仕立屋の役割だ。

 

私たちの仕立てる美しい洋服のもととなる、

美しい生地。

 

その美しい生地は、

歴史と伝統の技術を持つミルで織り上げられる。

 

その美しい生地は、

原料となる

歴史ある農家や羊飼いと羊のおかげのもとにある。

 

 

「美しい仕立て服」

 が出来上がるまでを遡ると、

 

生地を織るミル、

生地そのものの原材料、

そこに携わる人や羊まで辿ることが出来る。

 

 

今朝知った、

歴史ある一つのミルの閉鎖を、

「ああ。本当に残念だったね。」

と、

傍観者となるのは、

仕立屋としてはどうなのだろうか。

 

美しい仕立て服は、

質の良い、素晴らしい生地に支えられている。

 

仕立屋は美しい生地と共にある。

 

その美しい生地の事や、

それらを織るミルのこと、

それらに携わる人のことを、

 

その生地を洋服として身に纏う、

お客様と一番距離の近い、

私たち仕立屋という現場から、

時折皆様にお伝えしていくことも、

今後はして行けたらと思います。

 

「Bespokeと言う服の選択肢」

には、

仕立ての技術のみならず、

最高の生地を織る至宝の技術、

そして

それらに携わる人々の美しい精神と

生き様が宿っているのです。

 

 

スコティッシュリネン「歴史と化するはじまり」に、

なんとも考えさせられる、

 

土曜日、5月、1日。

 

 

「続けて行くことは本当に難しい、そして一番の目標」

By Hideaki Sato