みんなそれぞれMy Story【4】「単なる衣服ではなくて『衣装』なんですね」

 

こんにちは。黒田です。

 

 

まとわりつく残暑。

 

そんな時に欲しい。

今を乗り越える原動力。

 

残暑が明けたらやって来る、

お洒落が快適な、あの季節。

 

 

あともう少し。

 

熱中症に気をつけて。

頑張りましょう。

 

さて、本日は♪

 

今年始まった、ペコラ銀座の新企画

みんなそれぞれMy Story 第四弾 でございます。

 

さっそく、参りましょ〜

 

・・・

 

お洋服も人生も十人十色

~みんなそれぞれMy Story

 

人は皆それぞれの生き方があり、

十人いれば十通りの、美しい色を持つ。

 

私たちの日常は、

十人十色の想いが、

地球上のあちらこちらで重なり合って出来ている。

 

十人十色こそが美しく、

それはそれは尊く、

この世の何にもかえがたい、

宇宙の宝物。

 

十人十色いらっしゃるお客様に、

十人十色、それぞれお洋服をお仕立てすること。

それが、私たちペコラ銀座の日々です。

 

そんなペコラ銀座の日常の一風景を、

一人のお客様を通してご紹介いたします

本企画。

 

 

今回ご協力くださったのは、Kさん(60代男性、医師)

長年ペコラ銀座のフルハンドメイドをお仕立てくださっている、

かれこれ12年という長いお付き合いのKさん。

 

彼のMy Storyとは

 

・・・

 

「単なる衣服ではなくて『衣装』なんですね」

 

いつも素敵な洋服をエレガントに着こなし、とてつもなく暖かいオーラの持ち主であるKさんは、まるで歩く太陽。

お顔からこぼれ落ちそうなくらい大きくて気持ちの良い笑顔と、リズミカルで軽快なトークには、その場にいる誰もが魅了され、元気になる。

クラリネットにオーボエ、クラシック演奏も嗜むKさん。

大学時代は一念発起し全国の医学生に呼びかけて100人規模の学生オーケストラを取りまとめ実現させると言う、とてつもない情熱家でもある。

洋服に関しては、ちょっとひと並外れた歴史と物語をもつ。

洋服好きでお洒落な父親と、デザイナー志望の母親の間に生まれたKさんは、3歳の頃から母親の仕立てるスリーピースを着て育った。

幼い頃から、父親が自宅でテーラーに採寸や仮縫いをしてもらう姿を見ながら大きくなり、成人してからは自分自身も父親と同じテーラーに洋服を仕立ててもらい、まさに仕立て文化の中でずっと生きてきた。そんなKさん。

 

 

今回のインタビューは、

すっかりKさんにリードして頂いてしまいました。

 

問わずとも湧き出る湧き出る、

Kさんの興味深い話の数々に聞き入り、

たくさん勉強させていただきました。

 

 

仕立て服の文化そのものへの情熱と愛をたっぷり感じる

Kさんの、My Storyでございます。

 

 

・・・

 

「僕はね、スーツが大好きなんですよ。」

 

(そう切り出したKさんの顔には溢れんばかりの笑み。) 

 

これは、もうね、父親がお手本です。父はいつもスリーピースを着る、お洒落な人だったんですよ。

母親はデザイナーになりたかった人で、日本では戦後まだ珍しかった立体裁断の先駆者、伊東茂平の衣服研究所の研究生として立体裁断の勉強をしてたんです。服のアイデアをすぐデザイン画に起こせるように、デッサン、水彩画、油絵なども習って相当なレベルに達していました。しかし、結婚により家庭に入ってしまい夢叶わず、せめてものつもりで、家事や診療の手伝いを終えた夜中に、自分や子供の服をデザインし、型紙を起こして作っていました。

僕は3歳の時から、母の作った三揃い、それも、下が半ズボンのスリーピースを着て育ったんです。蝶ネクタイ締めて。

素敵でしょ?

そんなわけで、自然と、母が型紙を引いているところを見て育ったんです。コンパスや分度器も使っていたなあ。

母が、生地から買ってきて、僕を採寸して型紙を起こして裁断縫製するのを、いつも興味深く見てました。何通りもの縫い方があることや、いせ込みとかハ刺しとかの技法があることも、母から教えてもらったんです。

5歳を過ぎたら「もう長ズボンね」と本格的スリーピースに移行。

身体が大きくなったら寸法直し、寸法直しでダメならまた作ろうね、と。いわば、母が専属テーラーとして作ってくれる“誂え”を着て育ったわけなんです。なんて子だ!

 

それから、いつも父親の採寸や仮縫いをする姿も見ていました。

昔はそういうことが多かったんですけど、自分がテーラーに行くんじゃなくて、家に来てくれるんですよ、仕立屋さんが出張して。つまり、採寸や仮縫いを自宅に来てやってくれるんですね。

その様子をずっと見てました、近くで、正座して。母が「ここの背中の”突き”がちょっと」なんて指摘するのをね。

父は、ネクタイもいっぱい持っていたし、靴もたくさん。ピシッとスリーピースを着て、委員会などの集まりに行くのを玄関で見送るんですが、その姿がカッコよくてね。そんな父親をずっと見て育ったので、成人になって初めて自分から「テーラーで作りたい」と言った時の僕は、もうスリーピースしか頭になかったですね。

今でも僕は必ずヴェストも作ります。ズボンは必ずサスペンダー仕様にするんですが、サスペンダーを隠すためにあるのがヴェストなので、夏用のスーツであってもスリーピースで仕立てます。上着を脱いだ時にヴェストがあるとないとではエレガントさが全然違うじゃないですか。真夏の昼の外出時はさすがにツーピースで出かけますが、ヴェストは極力持って行きます。冷房の効いた建物や室内に入ったら、ヴェストを着てスリーピースに変身!こうすれば、ジャケットを脱いでも恥ずかしい格好にはなりませんから。

ヴェストと言えば、我が家の正月の光景を思い出します。祖父を筆頭に、父や叔父達が皆きちんとスリーピースで集まるんです。宴もたけなわになると、5人全員が上着を脱いでヴェスト姿になって酒を酌み交わすんですが、それが子供の目にも何とも格好良く見えて、早く大人になりたいと思ったものです。それを子供用のテーブルから見ていた僕もスリーピースに蝶ネクタイという格好だったんですけどね。笑

自分から本格的に服に興味を持ったのが、思春期の頃。

大学を2年浪人したとき、服の歴史みたいな本をやたらに読みました。

細かい、服のこの部分が、どうしてこの位置に?どうしてこの形に?なんていうのを沢山読んで、そう言う洋服の意味合いが分かるように、勉強をしました。

とにかく服に関する本を読んで知識をつけました。

ファッションとしての服への興味よりも、身分や立場を表す服装のあり方を知ることが大好きだったんです。

正統、オーソドックスな服の歴史を学ぶことで、一つ一つのパーツがなぜこの形になったのかが分かって、それを理解することで TPO を間違えずに済むんですよね。

TPOによって「この服はその場にそぐわないのじゃないか?あ、着ちゃおかしいよね」とか。服の細かいところの意味合いが分かると、こういう場面にこのデザインの服や靴はおかしいよな、と、自然と分かるようになるんです。

 

・・

 

「僕はイギリスのデザインが好きです。やっぱり、父のを見て育っているので」

 

実は僕、ずっと英国スタイルだった父のテーラーに作ってもらっていたんですが、その方がある程度のお年になって、確か80幾つになって「もう私きつい」と言われちゃったので、それで僕どうしようかなと思って探したところ、ペコラさんがいいかなとなりました。もう10年以上も前のことですが。

ペコラ銀座のホームページを見たり、佐藤さんのあの風貌を見たりして、「この人なら任せられそう」って思ったんですね。口コミを見ても良さそうだったし、イタリアと言っても、ミラノだったら、大丈夫かなと。

佐藤さんはもともと、すごくトラディショナルというかオーソドックス、正統派のスーツを作るんですね。

しかもミラノってイタリアの中でもイギリスが入ってるというか、イギリススタイルにすごく近いのがミラノなんです。イタリアでも北の人はすごく真面目で、デザイン的にもきっちりしてる。そうするとね、やっぱり、巷でイタリアンなんとかっていう中でも、佐藤さんのが一番僕の好みにも近いです。

ミラノのスタイルはイギリスに近いと言っても、芯地に大きな違いがあって、イギリスの服はミラノのよりももっと硬いんです。大袈裟に言えば鎧のイメージ。

基本的に立った状態でカッチリ見せるのがイギリス。イタリアは動いたり、ハグしたり、表現する動きが多いのがイタリアなんで、これには、芯地も柔らかくないといけないんですよ。

もう全部、芯地の作りも違う。佐藤さんの芯地は非常に柔らかくて良いんですよね。

だから、本当に着やすいんです、佐藤さんの服は。

それと僕はサスペンダーを使って、その上にヴェストを着るから、芯地が硬いと肩がこるんですよ。

でも、仕立てが良くて、芯地が柔らかいと、凝らないんです。佐藤さんのスリーピースを着て、カッチリとキメてても肩凝ったことがない。

一方、前のテーラー、昭和のお爺ちゃんが作ってくれてたのは、ものは良いんだけど 芯地がカッチリしているんです。日本の芯地屋さんの作る芯地って硬いんですよ。皺が無くてパリッと見えるんだけど、硬くて、肩がこるんです。 

人間は柔らかく動いてるから、ロボットみたいに動いてるわけじゃないからね。

 

良い服装のためには、ある程度の痩せ我慢は必要だと思いますが、ペコラの服はその痩せ我慢の程度を軽くしてくれます。

やはり、その人らしい動作や所作ができるという点でも、佐藤さんの服はとっても素晴らしいと思います。

 

・・

 

「僕は会話を楽しみます、服作るとき」

 

会話を楽しまないとダメなんですよ、服作るときは。

自分のキャラクターも分かってもらいたいし、どういう時に着るのか?とかも分かってもらわないといけない。

例えば僕の場合は、いろんな会議の時に着るんですよね。

服って、同じことを発言するのでも、キチッと服を着て、ネクタイ締めて発言すると、やっぱり伝わり方が違うんですよ。

こういう場面に着て行って、キチッと感を出したいんです、というのを伝えるんです。

それから服っていうのは、人柄を表すものでもあると思います。楽天的な感じのキャラの人とかだと、そういう雰囲気をもつ服にしてくれると思うんですね。

 

あとはまあ、とりあえず服って、同じテーラーでまず3~4着作らないと。4着目から、だんだんとね、こう気心が知れてきて、体のクセもつかんでもらえて、しっくりとしてきますよね。

1着目で「ん?」と思っても、諦めちゃダメなの。

できれば同じところで、4着目まで行った方が良いんですよね。

もう12年になるかな。僕が初めてペコラさんに入った時、なんかもっとゴージャスなお店を想像していたから、あれ、意外に小さいな、これでいいのかな?と思ったのを覚えてます。笑 しかも、あそこ、エレベーターが開いたら、もう逃げられないから。笑

僕は初めての店には必ず自分の一番気に入ってるスーツで行くのですが、初めてお会いした時の佐藤さんは緊張してらしたのかな?そういう雰囲気でした。後から聞いたら、僕の「普通の客じゃない、言い換えれば、面倒臭い客」オーラが出てしまっていたらしく、「この人を満足させることができるかな?」と思ってらしたみたいですね。佐藤さんって、あんなに凄い実力があるのに、けっこう謙虚なんですね!笑

それで初めてのオーダーで夏用のスリーピースを作って、2着目はコートを作りました。その時夏だったんですけど、その日はちょうど僕の携わっていたオーケストラのボランティア企画の帰りにペコラさんに立ち寄って。この時に、オーケストラのプログラムを佐藤さんに見せて話をしたりして、そこから僕は佐藤さんとすごく打ち解けたと思います。佐藤さんはクリスチャンなので、根底に大きな人間愛があるから、僕のボランティア精神をわかってくださったんじゃないかな、とか勝手に思ってるんですけれども。

その時に作ってもらったコートは今も一番愛用していますが、すごく素敵です。佐藤さんが感動したマリオ・ペコラのコートの、あのイメージで作ってくださっているので。

このコートを作ってもらったきっかけも、会話で、僕がこういう人間っていうのを分かってもらってですからね。

 

・・

 

「佐藤さんの服を着ると、その人が本来よりも素敵に見えるんです。」
 

佐藤さんの服が素晴らしいのはね、着た時に、その人が本来よりもずっと素敵に見えるんですよ。

体型に関係なく。佐藤さんの服を着ると、なんか、格好良く見えるんです。

やはりスーツっていうのは、男性をより魅力的に魅せるものなんですね。

それを、特に、魅力的に魅せる、プラスに持っていくのが、佐藤さんうまいんです。

要するに、アンテナ感度が鋭いのと、会話などを通じて「この人はこういう感じに仕立ててあげた方が魅力的に見えるだろうな」って、そのサジ加減がうまいんだと思います。

例えば、僕の体型や雰囲気には、ベントは入れない方が良いです、ノーベントでいきましょう、と提案してくれるんです。

それからズボンなんかも、生地によって、細かいところを一番ふさわしい仕様に変えてくれます。

ズボン(トラウザーズ)は非常に大事ですよ。 ジャケットに目が行きがちですが、スタイルよく見せたければ、ズボンこそオーダーにすべきです。これは皆さんにお伝えしたい!

家内には、「佐藤さんに作ってもらったズボンを履くと、あなたのすごい短足が、そう見えない、不格好に見えない」と言われるんですが、実は自分自身でもまさにそう感じています。

 

やっぱり、そこかな。

着ることで、その人の見た目のポテンシャルを高めてくれる。それに、外見だけでなく、内面のポテンシャルも高めてくれる。

そこが、佐藤さん、本当にテーラー、アルチザン、だと思います。

 

・・

 

「着ると、やっぱり元気になるんです。」

 

よし、今日は良い発言するぞという気になります。学会で着ると、大学の授業で着ると、やっぱり良いプレゼンができるんですよ。

そういう力があります、服には。

 

それはね、既製服を買って、袖丈を詰めますとか、ズボンの裾をお直しします、とかじゃあダメなんですよ。

いくら有名ブランドもので、70万とかそういう服を買って、後でお直しとかやっても、そういう力は得られない。

 

うん。ここに来て、作らないと。

自分を魅力的に見せるように、人柄をスーツで表現できるように作ってもらわないと。

 

そのためには、やはり、佐藤さんとの会話を楽しんで、お客側も自分を知ってもらうっていうのも大事ですね。

佐藤さんも、そこから色々拾って、やってくれますからね。

 

・・

 

「ところで、生地は触ってますか?」

(Kさんは途中、こう問いかけながら、続けて話した。)

 

服地っていうのはね、選ぶ時に必ず触らないとダメなんですよ、見るだけじゃ。

佐藤さんもいつも触ってますよね。

それと佐藤さんって、布地のコレクターでもあるじゃないですか。服地大好きな人っていうのは、やはり良い生地を揃えるんですよね。小さい頃から布を触っておられるし、お爺さんの代からの生地も知ってらっしゃる。

僕も子供の時から服地を触っているので、それが今に生きてますよね。佐藤さんと生地談議をすると盛り上がっちゃう。笑

ペコラには、ビンテージの生地がたくさん揃ってるのも本当に素晴らしいです。

生地はね、1980年代までが一番良かったんですよ。90年代から、もうダメになっていきます。昔は捻のしっかりした糸で、低速織機で丁寧に織っていたんです。だから、織りでいろんな模様を入れることができたし、コシやハリのある、触って揉んで「ああ、いいなあ」という生地がたくさんありました。

佐藤さんって服地大好きですからね。外国の倉庫に眠っているのを買ってきたりして、良い生地をたくさん持ってらっしゃる。ビンテージの生地も、もう世界的にも残りが少ない上、保存が悪いと虫も食っていますから、昔の良い生地を、独自のルートで手に入れられるのは佐藤さんくらいですよ。

今日も、実は持って来たんですよ、1970年代の終わり頃に父が作ったキッドモヘアの夏用スーツのズボンなんですけど、こういう生地がもう無いんですよね。今ではもう織れないので、だから佐藤さんに探してもらおうと思って、今日見せようと思って持ってきたんです。

 

客としても、店主をその気にさせる知識をつけていく。良い服を作ってもらうには、そんな客側の努力も、ものすごく必要だ、と僕は思います。

そういう知識をつけていると得ですね。

宝石もそうですけど、こちらが色々知っていると「これも」なんて奥から出てくるんですよね。

布が好きで、その勉強をするとか、服の歴史の本一冊読むだけでも。どうしてその服はその形になったのか、とかね。

そもそも同じ布でのスリーピースなんて元々無かったんですからね。上着とヴェストとズボンは、それぞれ違う素材、違う色で作るのが本来の姿だったんですよ。それをある時、ドイツのマインツにいた職人が全部同じ生地で作っちゃった。最初は酷評さんざんだったそうです。ところがそのうちに「なんか素敵じゃない?」ってなっていったんですよね。

それから昔の上流階級の服は裏地がシルクで、しかも詰襟のデザインだった。で、時々、遊びで詰襟の首元を折り返して裏地を見せたりしていた。その名残が今のタキシードの襟の部分のシルク(拝絹)なんですよ。詰襟の首元を折り返してみるとお分かりの通り、見える裏地は今で言う下襟の形になりますよね。だから、拝絹は下襟だけが絹なんです。そういう歴史を知ると、タキシードは、ヘチマ襟よりも、剣襟で下襟だけ拝絹というデザインの方が本格的・正統的なんだということが分かるんです。

そういう元々の歴史を知ると、何で服のデザインがこうなってるかとか、必然的な意味が分かってきて面白いですよ。

 

・・

 

「服は本当に大事。」

 

内面を磨いていれば外見は、なんていうけど、それは全く違うと思います。今みたいに、国際化とか言われれば言われるほど、国際的な舞台では見た目で評価されるということを肝に銘じておかないとね。

ヨーロッパの人たちなんか、見た目で、きちんとした服を着てるだけで、お店でも全然扱いが違いますから。

ヨーロッパには階級文化がまだ厳然とありますからね。ちゃんとしたお店には、それなりの服装をしていかないと相手にしてもらえませんよ。単なる衣服ではなくて、服装なんです。“場”への敬意でもあるんですよね。

 

同じ3つ揃いを着るにしても、やっぱり佐藤さんのを着た方が絶対に良いですよ。

お店から受ける評価としても。

 

着る人がその人なりに魅力的に見えるように作ってくれるので、その力を借りながら、色んなお店にいく時も、ホテルに泊まる時も、こちらが何も言わなくてもちょっとグレードアップしてくれたり、同じ値段でも角部屋にしてくれたりと、扱いが全然違います。

服は見られています。

妻の服を買いに店に入っても、店員さんは僕のスーツの方に食い付いたり。 靴、鞄、ネクタイ、時計、万年筆などを買う時も、良いスーツを着て行くと扱いが違います。

特に欧米では絶対。良い扱いを受けたければ、良い服を着ないとダメですね。

夏でもちゃんとネクタイしたり。蝶ネクタイ(ボウタイ、パピヨン)も良いですね。

やはり、勝負の服として着る。あるいは、相手や場への敬意を込めて着る。自然に背筋が伸びる。

ペコラの服を作るというのは、そういう意味合いもありますね。

 

 

 

 

・・・

 

 

豊富な知識。

独自の経験。

類をみない温厚なお人柄。

 

品格とインテリジェンスに満ちながらも、

相手にプレッシャーを与えない気持ちの良い空気を演出するのは、

まさにKさんのお人柄のなせる技。

 

今回のインタビューは終始笑顔で、

とっても勉強になる、

楽しく有意義な時間を過ごさせていただきました。

 

本当にありがとうございました。

 

最後に。

文化として洋服を愉しむKさんより一言。

 

「洋服ブラシは大事!洋服ブラシにお金を惜しまないで!」

By Kさん

 

 

・・・

Kさん、この度はご協力頂き本当にありがとうございました。

Kさんのご活躍を心より応援しております。

 

 

 

みんなそれぞれMy Story【3】「フィーリングが合うかどうか」

 

こんにちは。黒田です。

 

 

本日は。

 

 

お久しぶりとなります、

今年始まったペコラ銀座の新企画。

 

 

「みんなそれぞれ My Story」

第三弾でございます。

 

では、さっそく

参りましょう〜♪

 

 

・・・

 

 

お洋服も人生も十人十色
~みんなそれぞれMy Story

 

人は皆それぞれの生き方があり、

十人いれば十通りの、美しい色を持つ。

 

私たちの日常は、

十人十色の想いが、

地球上のあちらこちらで重なり合って出来ている。

 

十人十色こそが美しく、

それはそれは尊く、

この世の何にもかえがたい、

宇宙の宝物。

 

十人十色いらっしゃるお客様に、

十人十色、それぞれお洋服をお仕立てすること。

それが、私たちペコラ銀座の日々です。

 

そんなペコラ銀座の日常の一風景を、

一人のお客様を通してご紹介いたします

本企画。

 

今回ご協力くださったのは、Tさん(50代男性、公務員)

2018年にPRIMAPROVA(現在このラインは承っておりません)のキャンペーン時に 初めてご来店頂きました、Tさん。

彼のMy Storyとは

 

・・・

 

「フィーリングが合うかどうか」

 

長身で自然体、落ち着き払った静けさの中に感じる哲学的な雰囲気。

そんなTさんはインタビュー当日さらりと白黒を着こなし、いつものように気品溢れる奥様とご一緒の来店でした。

自ら考え抜いて言葉にした想いを、細かくスムーズに語るTさん。その仕草と眼差しからはものごとの真理を見抜くかのような力を感じる。

会話の中で常に思考をめぐらせている様子のTさんは、会話においてふと納得した瞬間には「通じ合った」事に対しハッキリと反応を示す。

奥様は隣で時折頷く、笑顔を浮かべながら。そうして、素敵な間合いをもって、会話に言葉を添える。

仲睦まじいご夫妻はベネチアのカーニバルが大好きだといい、これまで2度参加した事があるそうだ。

Tさんは趣味である写真を撮り、奥様は仮装をし、ご夫婦で中世の雰囲気漂うカーニバル文化を楽しむ。

色彩豊かなカーニバルの世界も、白黒写真で撮る事を好むTさんは「色を取り払った白黒世界の静けさの中には本質を感じる」と言う。

 

そんな、ものごとの本質を追求するTさんの感性は、

彼の語る言葉の端々から感じられる。

 

インタビューでは落ち着いた口調でお洋服への想い、

ご自身の考えを語ってくださいました。

 

・・・

2年前に初めてご来店頂きましたが、ペコラ銀座を知ったきっかけを教えてください。

お店を知ったのは、ウェブサイトの検索です。それまでは、正直知りませんでした。

その時は今の綺麗なページになる前の、昔のページを見たんです。すごくシンプルで、なんだろう、カッコ良かったんです。それで、気になるお店の一つになりました。

そもそも調べ初めたのは、ちょうど50歳になるか、なったかという時期ですが、実はスーツをちゃんと仕立てた事が無かったんです。でも「本物のスーツって誂えるものだ」という意識はずっとどこかにあって、憧れでした。例えば、英国の老舗テーラーで誂えたスーツとかどんな感じなんだろう?って。

50歳という年齢が見えてきて、実際にその年になって。そうしたら残りの時間も見えてくるじゃないですか、スーツを着られる時間も。その時に、「いつか誂えたいと思っていたスーツを、それを今回誂えよう」と決めたんです。

どうせなら銀座で、と思いました。

そこで、「銀座」「スーツ」「仕立て」とか、検索をかけた中でペコラ銀座が出てきた。

ただ、あまりお店の雰囲気とか分からない状況だったので、他のお店も含めてですけど、敷居が高いなと、そう思っていました。

それから、怖さもありました。

やっぱりオーダーで仕立てるなら30万くらいになるじゃないですか。覚悟は決めてるはずなんですけど、いきなり30万でチャレンジするのは怖い部分があるんです。

 

その怖さというのは「フィーリングが合うかどうか」。

 

出来上がってくるもの自体はどこのお店でも確かなものが出来上がってくると思うんですけど、「それが、自分のフィーリングに合うかどうか」というのはまた違う話なんですよね。

銀座にもたくさんお店あるじゃないですか。

そのどこかに入ってお願いした時に、洋服の細かいニュアンスの違いや、そのお店のハウススタイルがあるのか、こちらの要望に応えてくれるのか、とかは分からないじゃないですか。

その上、デザインというか雰囲気というか、自分の好みに合うかどうかなんて、実際には全くわからないですよね。

その意味で、お店を選ぶのは結構悩みました。

オーダーで作ろうとは決めていたんですけど、悩みましたね。

 

 
悩まれた中で、ペコラ銀座を選んで頂いた理由を教えてください。

大きなお店で、例えばスタッフさんも職人さんも多いところだと、きっと実際に手を動かすキーパーソンの人には直接会えないんだろうなと、思いました。

お店で測ってくれて対応してくれる人と、実際の職人さんは別のところにいるんだろうなと。私の勝手な思い込みかもしれないけど、そんな不安はありました。

で、それだと、結果的に行き違いが出てくるのは嫌だなと思ったんです。

だから「割と小さいところ」というか、職人さん、そういう人と直接話ができるところが良いなと思っていて。

それも一つの要因だったのかな、ペコラさんにしたのは。

あとは、最初にも話しましたが、昔のホームページは、情報が少なかったけど「他のお店とは違うな」と感じていました。

なんだろう、日本の昔からのスーツとは違った、ヨーロッパ・ミラノというその辺の独自のセンスと腕で勝負されてるのかな、という雰囲気は気になってたんです。

 

最終的な後押しとなったのは、当時の、PRIMAPROVAのページを見て、そこにのってたプライスが比較的「これなら届くかな」というものだったんです。それで行ってみようと決めました。

 

 
お洋服に対する想い、初めて「誂える」に至るまでの経緯などお聞かせください。

割と小さい頃から、好きなミュージシャンとか、アーチストとかが着ているスーツを見て「あの服かっこいいな、あの形かっこいいな」とか思ってました。

それから中学から高校くらいの時に、日本でデザイナーズ・ファッションが流行った時期があって、そういう意味では世代的にデザイナー的な洋服には触れる機会もあって、ああゆうの格好いいなとは思ってました。

黒一色でパリコレにチャレンジしたデザイナーさん達とか、凄いなと思ってました。今でも凄いなと思いますけど。

スーツとは少し違う世界ですが。なんだろう、決まった型ではなくて、布一枚で身体にこう、うまく線が合うと、綺麗に見えるんだなって。

素人考えですけど、スーツって完全に三次元の立体を作る世界じゃないですか、それって多分ヨーロッパ的なのかなと。その人にぴったり合うっていうのも、ヨーロッパ的な感じがするんですよ。

それに対して日本って、例えば、着物だと平面の布一枚からその人の身体を包んでいくわけじゃないですか。風呂敷なんかもそうですけど。それって日本独特だと思います。それでまたほぐすと平面に戻っちゃう。

スーツの考え方は、それとは全く違っていて、その人にぴったり合うのは、縫製技術とか、アイロンワークとかで、完全に作り込んでますよね。それってなんか文化の違いだと思うんです。

先ほどのデザイナーさん達がやった、もともとカラフルな世界に対して黒一色で、きっちりしたものじゃなくて、布一枚で被せたようなもので、それでもこういう風に綺麗に見えるんだって。それは、和服のイメージとか、そういうベースが日本人にはあるのかなって思って。それが世界に通用するのを見て、凄いな、面白いなと思いました。

中学から高校くらいは、そういうものを目にしていたので、洋服に興味はありましたね。

 

スーツという意味では社会人。

社会人になって初めて買ったスーツでの経験は、既製のものを試着をして、例えば私は腕が長いので「じゃあ袖を1cm2cm出しましょうか」と、そこから始まるんですよね。JISの標準体型があって、多少はメーカーさんによってデザインは違うんでしょうけど、基本の形があって。その基本をもとに「じゃあここは出します」とか言われる。言われたまま、そこが合えば良いのかな、そういうものなのかなって思っていました。社会人になりたての頃はそのくらいしか買えないというものあって。

今50代前半なので、当時は30年くらい前。その時でもやっぱり既製スーツが主流でした。「誂える」なんて、それこそ政治家か会社の重役かと言う、そんな感じだったように思います。

ただ、「本当のスーツは誂えるもの」っていうのは、ずっと思ってはいたんですよね。「誂える」という言葉を、どこで覚えたのかは分からないんですけど、そういうイメージがずっとありました。ただ、高嶺の花というか、子どもが行くところではないと感じてました。

 

30代で転職して、スーツを着る機会が増えました。その時の先輩に「安く出来るから作ろうよ」と誘われて、初めてイージーオーダーというものを経験しました。

そこで初めて、自分のサイズを測ってもらって最初から作ってもらう事を経験しました。フルオーダーとは違うのは分かってるんですけど、既製で「ここを2cm出す」というのとも違うじゃないですか。その時は、まあそれなりに合うので「合ってるのかな」と思っていましたね。今から考えると「合ってなかったんだな」と思いますが。

 

イージーオーダーを経験すると、今度はお店の人に色々と聞くようになりました。イージーオーダーの「仕組み」みたいなのを色々聞きたくなるじゃないですか。

自分で色々考えてお店の方に質問してましたね。

例えば、「基本となる形があって、それが三角形だとすると、丈を3cm長くする場合は、この三角形をビューっと伸ばして、全体を3cm長くする。その時、中間のボタン位置は1.5cm位置が変わるというイメージですか?」とか。

イージーオーダーを色々試す中で、採寸の質問や仕上がり寸法の決まる仕組みなどについて沢山、質問しました。

でも、「なるほど」と納得することは、あまり無かったですね。

担当する人によっても、仕上がりが違うことも知りました。「昔、仕立てやってたんですよ」と言う方だと、同じイージーオーダーでも少し出来上がりが違うんですよね。

イージーオーダーは随分試したんですけど、結局は満足しきれなかったです。

採寸する人が服の仕立ての仕組みを’理解’している事、服を仕立てる人が着る人の体型や動きを’理解’してそれに対応する技術を持っていることが必要なんだという結論になりました。原型があって、それを引き延ばしたり調整していく仕組みは、特に私のように標準体型からの差が大きい場合、限界があると思いました。

それで結果的にちゃんと「オーダーで誂える」しかないのかなと思って、チャレンジしてみることにしました。

 
 
ペコラ銀座での初めてのオーダーでの体験についてお聞かせください。

ペコラさんでの一着目は、紺無地のスリーピースと決めていました。

スーツは柄物も色々経験した中で、やっぱり紺無地が一番格好いいなと今思っていまして、その時のリクエストはそれだけだったと思います。

 

それで、

最初に出してもらった生地に一目惚れだったんです。

だよね、あれ。(奥さんをチラッと見るTさん)

 

ちょっと青みがかった光沢のある、SCABALのビンテージだったのかな?

その生地を一番初めに見て、その後他の生地も見せてもらったんですけど、最初に見たその生地が圧倒的に良くて、「生地はもうこれしかない」と思いました。

 

それで値段を聞いて。

最初30万くらいと言われたかな、確かそれくらいだった。

 

、、、正直予算オーバーだったんですよ。

 

最初の予算では、20万ちょっとくらいでもしかしたら出来るんじゃないかなと思ってたんです。

 

それで相当悩んだよね、一緒に(奥さんの方を見るTさん)

奥様:「そう。一回外出て、お茶してから考えようって言ってね。一度お店を2人で出ました、笑。一時間ちょっとくらいかな、外に出て、お茶飲みながら、カフェで話したね。 」

 

多分、その時、腹の中では決まっていたと思うんですけど。やっぱり最初、20ちょっとでと思っていたから、30って大きな数字じゃないですか。

それで、悩んだ。

悩んだんだよね。

 

奥様:「うん。でも、すごく欲しい。って。欲しいなって。ね」

 

もう少し安く出来るところを探しても、どうかな、と、色々考えました。

お店を変えるというのも、なんか嫌だと思って。

 

それで、決めました。

その日初めて佐藤さんとも色々お話をさせてもらって、「やっぱり、この人にお任せしてみよう」って思いました。

その時、失敗というかうまくいかないことは、不思議とイメージしませんでした。

 

ただ30万ってやっぱり大きいなって。

 

オーダーの難しいのは、「こんなイメージで出来上がりますよ」っていうのは見えないじゃないですか。

そこは、どんな形になるのか、分からなかったんだけど、

もうここは「この人にお任せするんだ」という感じですね。

 

 
佐藤英明なら大丈夫と思ってくださった?

そうですね。はい。

 

奥様:「そう。なんかすごく、信頼できると感じて。なんか、こう、本当に洋服が好きなんだろうなって。ね。」

 

そう。

「こうです」「ああです」と、必要以上に説明されないじゃないですか。だけど、聞くと、ちゃんと的確にそれに答えてくれる。

膨大な経験と知識があるのに、それをひけらかす訳でもなく、こちらから聞いたり要望したことに対しては、的確な説明付きで、いくつかの選択肢を示してくださる。

なんというか、本当の「プロ」なんだなと思いました。

それで、もう、お任せしよう!そう思いました。

 

 
ペコラ銀座でのオーダーのプロセスの中で感じたこと、印象に残っている事などありますか?

初めてのオーダーの時は、採寸があっと言う間に終わって「えっ、これで終わり?」と思いました。

 

それから仮縫いが初めての経験だったので、楽しみでした。

奥様:「うん。楽しかった~。」

 

仮縫いは、パンツを最初に履いたんですが、腰回りの感じが今まで経験したことのない感じでした。

凄いなと思いました。

自分の身体に吸い付いてくるような、当たるところが、「面で当たっている」ようなイメージです。ピタッとハマるんだと言う感じで、パンツはパンツで凄いなって。

 

それで、次に上着を羽織るじゃないですか。

あれを羽織った時はもう、感動ですね。

 

何故かと言うと、胸から肩周りがピタッと吸い付く感じと言うか、あの感覚は味わった事がなかったです。

胸から肩周りのフィット感、あれは感動ですね。特別な体験。

本当に凄いと思いました。

 

ここ(胸)から上がピタッとはまって、三次元で、ピタッと吸い付くと言いますか。だから、割と重い生地だったと思うんですけど、着ると全然重く感じなかったんです。

 

ジャケットはもう、羽織った瞬間に、わあ凄いって。

 

奥様:「うん。感動してた。」

 

奥様の目から見ても?

奥様:「もう感動してました。あんまり、こう、表に出すタイプでは無いんですけど、おおって言う感じでした。」

 
 
仮縫いの感動の後、出来上がりの納品時はいかがでしたか?

「ああやっぱり、この感覚、この感覚」という感じです。

ラインも綺麗だし、やっぱりなんだろう、綺麗ですよね。どこにも無駄がない。

こう鏡で見た時に、脇の部分とかダブつくところもないし、肩もぴったりしてるのに動いても引っかからない。パンツも含めて全部がぴったりでした。

 

「これがオーダーなんだ」と思いました。

 

二着目はスタンダードラインでジャケットをお願いしました。

それは、一着目作っていただいたスーツが、もったいなくてなかなか着れず、本末転倒なんですけど 笑。 プラベートでも普段使いできるジャケットを作りたいと思いました。

印象に残ってるのは、「今回は着丈ちょっと短い方が良いですよね」って、佐藤さんからさり気なく言ってくれた事です。スーツよりも着丈を短くした方が良いかなとは思っていたんですが、言い忘れていたんです。こちらは何も言っていないのに仰ってくれて、プロだなと思いました。

一着目を着た時より、少しゆとりがあるように感じました。ジャケットだからかな? その分リラックスして着られる感じです。スタンダードラインは仮縫い無しでしたが、凄く良くできていると思いました。(Tさんにご注文頂いた当時のスタンダードラインは仮縫いがありませんでした。※現在のスタンダードラインは仮縫い1回付きです※)

 

いつかは、フルハンドでお願いしたいと思いますね。

「この上があるんだ」って思うと、それはやっぱり試してみたいなと思います。

ちょっとまだ届かないなとも思いつつ、そう言っているうちに時間は経って行って、着られる時間も少なくなってくるから。それこそ、10年とか普通にもつものを作っていただくので、何かきっかけがあればお願いしたいですね。 

 

 
その後、ペコラ銀座の洋服を着ていてどうですか?

ペコラさんで作ってもらったものを着る時は、良い意味での緊張感とか高揚感がありますよね。気が引き締まって、ちゃんとしないといけないなって。姿勢とか気になります。

それから、何かひとつがよくなると、他もだんだん気になり出すんですよね。

すべてに手が回ってるわけではないんですが、今一番の課題はシャツです。

シャツは難しいですね。

着るたびにクリーニングも少し辛いですし、やっぱりノーアイロンで洗えるのって凄く楽なんですよ。それに慣れちゃうと、中々、良い生地でちゃんとっていうのは。

そうすると、やっぱり便利さと天秤にかけると、既製である程度合ってるもので済ましちゃおうかと思う事が多くなります。

 

あとは、ネクタイもそうですね。

私ネクタイの結び方は、確か小学校の時に父親に教えてもらったんですが、実は50過ぎてネクタイの結び方を本気で勉強しました。

 

奥様:「それは違ったの?今までのと」

 

んん。違うというか、何が正解かは分からないんだけど。結びの大きさとかバランスとか、ちゃんとしないとスーツに負けちゃうんですよね。

 

奥様:(頷きながら)「ふ~ん。広がるね~。」

 

あまりネクタイしないんですけど、するときにはネクタイそのものも選びますし、やっぱりスーツに負けないように。

 

奥様:(笑顔で)「なんか一生懸命しめてるよね」笑

 

 
これからペコラ銀座に来ようと思う方へのアドバイスをお願いします。

とにかく、佐藤さんに相談してみることかな。直接相談して、いろいろと話をすることで、自然に方向性は見えてくると思うから。

レディースにも対応可能と仰っていたので、興味のある女性の方も。佐藤さんをはじめ、スタッフの皆さんはフレンドリーだし、素敵な時間と空間ですよね。

特別な体験もできるし。

 

・・・

 

今回のMy Story初となるご夫婦揃ってのインタビューは、互いに言葉を交わし合う談話のような空気感ですすみ、スーツ以外にも沢山の興味深いお話を聞かせて頂きました。

 

そんな楽しい会話から垣間見えた

Tさんと奥様の素敵なお人柄を

ここよりショートインタビュー形式でお届けいたします♪

 

いつもカメラを持ち歩いてるとお聞きしました。

奥様:「そう写真。写真、撮るの。好きですね。」

そうですね、カメラは30代になってからです。それまでは趣味らしい趣味がなかったんですが、趣味はなんですか?ってよく聞かれるじゃないですか。「じゃあ、写真にしよう」と決めて、カメラを買いました。

奥様:「凄い、こだわりがあるんです。カメラとか、レンズとか。」

 

カメラで撮る対象は何ですか?

人を撮りたいんですけどね。

奥様:「けど中々、知らない人は撮れないんだけどね。そう、でも、ベネチアのカーニバルが大好きで。」

 

ベネチアのカーニバル?

奥様:「イタリアのベネチアの、仮面とか、仮装するカーニバルがあるんですけど、そこでは堂々と人を撮れるという。」

 

そうですね。 ベネチアのカーニバルは、いつからかは覚えてないんですけど、いつか行ってみたいなと思っていて。憧れだったんです。

 

奥様:「凄く楽しいですよ。私は写真撮るのは途中で飽きちゃうから、どちらかと言うと仮装しちゃうの。誰でも参加できるから。もちろんコンテストとか、そういう催しもあるんですけど、基本は皆好きな格好をして、街を歩いてる。中世の格好とかする人もいっぱいいて、ここはいつの時代?中世?っていう感じ。」

 

仮面舞踏会とか、ああゆう流れがあるのかと思うんですけど。ベネチアのカーニバルって、仮面をして、その期間だけは、階級や性別など関係なく「みんなで楽しむ」みたいな感じなんです。仮面とか、衣装とか、作って。

 

奥様:「そうそう。本気で参加してる人たちは、もうそれこそ一年がかりで衣装とか作ったりしてるから、写真はもう‘撮って撮って’という感じで撮らせてくれるんですよ。」

 

(ここで少しTさんの撮ったカーニバルの写真を見せていただきました。)

 

写真、白黒が多いんですね、白黒で撮るのが好きなんですか?

あ、白黒好きですね。

 

奥様:「色が雑音だってね」

 

そんな感じしません?同じ写真でも、色がついてるのと比べると、白黒の方が静かに見えませんか?

それと、想像力を掻き立てるじゃないですか。

 

色がついてると答えが見えてるようだし、色って音のような気がして。

好みにもよるけど、あまりカラフルだと、ちょっとうるさいなって。

色がついてるものから、パッと色を取ると、静かになるような。色って、音なのかな、と。

どっちが良いってものではないんですけど。

 

何においても、すごく本質を探ろうとするのですね。

奥様:「そうなんです。お洋服のことだけじゃなく、なんでもそうなの。そうゆうところはあります。」

 

なんか、感覚的に感じるものを、考えて、説明したくなるんですよね。

説明できないんですけど。

 

あ。そうだ。

ちょっと前に、テレビで禅の番組をやっていて、そこで僧侶が「なんでも、言葉にした時点で、その人の背景だったり、教育だったり、宗教観だったり、必ず入っちゃう」という話をしていて。

言葉にした時点でそういうものが必ずついて回るから、そうじゃなくて、もっと身体で感じるものを、みたいな話をしている時に「ああそうだな」と思ったんですよね。

なんでも説明すれば良いってもんじゃないなって、思った。笑

 

奥様:「でも、言葉にするのも大事よね。言葉にすると、考えがまとまるし。」

 

うん。ちゃんと、言葉に出来るということは、そのことについて、一定の理解をしてることになるのかもしれないけど。

すごく難しいことを簡単に説明する人って、それをきちんと理解しているから説明できるのであって。

だから言葉で説明するのもすごく大事だとは思うけど、色々感じていることって、説明しきれないと思います。

 

奥様:「本当に感じてるものと比べたら、言葉の数の方が断然少ない。全部を伝えるのは難しいなって、思うよね。」

 

・・・

 

スーツのお話から、洋服への想い、カーニバル、写真、白黒の世界、僧侶の言葉と。Tさんと奥様のお話を伺う時間はたくさんの発見、考えさせられる事に溢れていました。

 

特に「言葉にする」と言うことにおいては、ペコラ銀座のブログを綴る立場としてはとても身に染みるものがありました。どんなに言葉にしても、ペコラ銀座の洋服の着心地、美しさ、本当の良さはと言うのは実際に「体感して頂くほかにない」と言うところがあるものです。

それでも、ペコラ銀座の洋服づくり、テーラー佐藤英明の想いを綴り、皆さまにお届けする事によって、洋服を仕立てる文化をより多くの方に身近に感じて頂き、この美しい文化を愛で続けていけたらと思っております。

 

この度は、Tさん、奥様、お二人の貴重なお時間をいただき、

ご協力いただきましたことに深く深く感謝いたします。

 

素敵なお二人の今後のご活躍を心より応援しております。

本当にありがとうござました。

 

今後もお客様の素敵なMy Storyをご紹介して参りたいと思います。

どうぞ宜しくお願いいたします。

みんなそれぞれ My Story【2】「更なる世界を」

こんにちは。黒田です。

懸賞抽選を無事に終え、

ペコラ銀座店主に束の間の安堵の表情が見られる今日この頃です。

 

この度の懸賞を行えましたのは、

まさに、皆様お一人お一人のおかげであります。

ご応募頂きました皆様へ心より御礼申し上げます。

 

・・・

さて本日のBlogは、先日はじまったばかりのペコラ銀座新企画「みんなそれぞれ My Story」第二弾と致したいと思います。

それでは、参りましょう〜

 

お洋服も人生も十人十色
〜みんなそれぞれMy Story〜

 

人は皆それぞれの生き方があり、

十人いれば十通りの、美しい色を持つ。

私たちの日常は、

十人十色の想いが、

地球上のあちらこちらで重なり合って出来ている。

十人十色こそが美しく、

それはそれは尊く、

この世の何にもかえがたい、

宇宙の宝物。

十人十色いらっしゃるお客様に、

十人十色、それぞれお洋服をお仕立てすること。

それが、私たちペコラ銀座の日々です。

そんなペコラ銀座の日常の一風景を、

一人のお客様を通してご紹介いたします

本企画。

 

今回ご協力くださったのは、Hさん(50代男性、エネルギー関係会社員)

2018年秋にグレーのグレンチェックで3ピース を。2019年夏にはネイビー無地の3ピース を。2年連続でSTANDARDLINEにてお仕立てくださいましたHさん。そんな彼のお洋服にまつわるMy Storyとは♪

・・・

 

「更なる世界を」

軸の定まった目の奥の強烈な輝きと、凛とした佇まいが素敵なHさん。多くの趣味を持ち、いずれの趣味も、そのめり込む深さと言ったらこれがまたすごいんです。

好きだと感じるものを、意思を持って「味わう」こと。

表面だけでなく、奥行きと深みまでしかと堪能すること。

限度知らずの探究心と怖いもの知らずの冒険心。

幾つものお顔を持つ、Hさん。

どのお顔も正真正銘のHさん。

 

<時計のコレクター、Hさん。>

その歴、なんと20年越え。コレクション、御知識、もはや本職です。そしてなんと言っても、その情熱たるや。聞くものを魅了する、素晴らしい輝きをもってお語りになります。

<ダイバー、Hさん。>

こちらも圧巻の歴、25年越え。パラオやモルジブの海も潜り、今は毎年のように沖縄の石垣島でダイビング。ところが一言でダイビングとは言っても、オーシャン感からほど遠い、ひたすら海底を這いずって鑑賞する「ウミウシ」の世界にどっぷりハマり、「ウミウシ」写真をコレクション中。

<元、アマチュア四輪競技選手?! Hさん。>

JAFライセンス元保持者。表彰台経験あり。その後、単車のオフロードレーサーに転身!Hさん。こちらはとっくに引退されていますが、「僕は骨折したことが無いのが自慢です」とのこと。

そして新たに、

<コーヒー焙煎人ともなりました、Hさん。>

昨年の3月からコーヒー豆を炒り始め、夫婦で仲良く不良豆を弾き、日々焙煎。今や、朝の淹れたて自家焙煎コーヒーをマイポットで携帯し、「次はドラム式に移行しようかな」と、軽快な様子で検討中。

そんな、人生を思いっきり生きているHさんが、ペコラ銀座での仕立て体験を語ってくださいました♪

 

スーツに対する想いなど、お聞かせください。

「もっと早く作れば良かったな」と思います。

 

それはビスポークをですか?

はい。

(補足:Hさんの初めてのビスポーク体験はペコラ銀座ではありません。)

もともと例えばチェスターバリーのフルハンドの既製服を、それなりに直してもらえるので、結構体に合うと自分で思っていたんですが、「そんなに既成って合っていなかったんだな。」という事に、ビスポークしてみて初めて気づいたんです。

僕は標準体型だと思っていたし、既成が標準体型に合っていると言う概念があったから。

でもそれは、「合っているじゃないかと、勝手に思っていただけだったんだな。」というところに気がついたんです。

例えば、ぼく、腕が細いんですけど、アームホールを小さく作ってもらうと全然動きやすいじゃないですか。

「全然違うんだな」と思いました。

服飾はもともと興味があったので、中野香織さん 出石尚三さんとか、スーツ系の本を結構読んで、分かった気にはなっていたんですけど、

「ちゃんと作らないと、やっぱり分からないんだな。」と、実際に作ってみてから思いましたね。

 

どのようにしてペコラ銀座をお知りになりましたか?また、初めてのご来店に至るきっかけは?

ペコラ銀座は有名なので、着道楽の人は絶対知っていると思いますね。でも足を踏み入れたら40万50万の世界だなと言うのはやっぱりあって。

実際に初めて来たいなと思ったのは、STANDARD LINEのキャンペーンを知って「これだったらつくれるかもしれない。」と、思いました。

 

なぜ、そもそもペコラ銀座で仕立てたいと思われましたか?

もうちょっとランクの低いスーツは2着くらい作ったことはあるんです。それで、もうちょっと良いの行こうかなと思って、色々調べたり物色していたんです。そのうちに、ブログのキャンペーンの告知にぶつかりました。

他にも、行こうかと検討していたところもありましたが、BLOGをみて、これは昔から憧れだったペコラに行くしかないなと。

 

ずっと憧れはあったけれど、ペコラ銀座で実際に仕立てるまでに至らなかったのは、お値段とか、そういうところですか?

んん。と言うよりは、「なんとなくこれで良いんだと思っていた」と言う部分の方が強いです。

「更なる世界」みたいなものを知らない人はそのままなんですけど、

今回ペコラ銀座でオーダーしたのは、「もうちょっと上を目指そう」と、そう思ったからなんじゃないかなと思います。

 

もうちょっと上をと思ったきっかけはどういったものですか?

そうですね。去年だから、50なるならないと言う時期で。あとスーツを着られるのも、定年退職まで10年くらいしか着れないなと。

そう思うとやっぱり、身体に合った、自ら満足するようなものを着て、仕事をしたいなと思ったんですよね。

 

オーダーする前のペコラ銀座のイメージは?

評判が良い。

評判の良さと、それと引き換えに、敷居の高さというか。

 

初めてのオーダーを経験した後のペコラ銀座の印象は?

初めて入った時も、意外と、フレンドリーとまではいかないけれど、すごくお店の雰囲気に合った気持ちの良い接客をしてくださるなと思って。そこは良いなと思いました。

常連さんが居つくのが、分かる気持ち。

 

それは、店主の人柄というところでしょうか?

佐藤さんのお人柄だと思いますね、非常に。

服飾の方って、なんだか神格化されちゃった人みたいな、とっつきづらいとかなんか色々あるじゃないですか。

なんか、そういう人の中の一人だと捉えられちゃうと損だなと思って。

ものすごくフレンドリーというか、優しくお話ししてくれるし、そういうキャラクターだっていうことってなかなか伝わりにくいですよね。

 

当店は、初めての来店のハードルが高いと言われる事が度々ありますが、そのあたりはいかがでしょうか?

ビルのあの空間まで来て、「やっぱりちょっと違うなって」なかなか帰れないですもんね 笑

でも、僕は時間まで予約していて、その時点で完全に決心をしていましたので。

 

2018年に続いて、2019年もお仕立てくださいましたね。

はい。「もう行くしかない」と思っていましたし、友人を紹介して、券もいただいたので。

(補足:2018年、ペコラ銀座ではお友達紹介キャンペーンを開催しておりました。)

その券が無くても、来てたと思いますけどね。

 

お気持ちとしては年に1着?

そうですね。

せっかく20年も30年も着れるようなものを作っていただいているのに、もったいないですから、着る機会が少ないと。

だからまあ、年に1着と。早い方が良いなと思いましたね。

 

仕立て上がったスーツに袖を通した時の感想を一言で言うと?2018年、2019年とそれぞれお願いします。

 

2018年の一言
「おおおぉぉ」

ですね。

 

2019年の一言。

もう衝撃はすでに味わっていたので、

「これだよ、これ」

と言う感想ですね。

 

綺麗ですよね。見た目。綺麗です。どこにも何も、変なところがない。

極論すれば、身体に合っていれば、デザインとかどうでも良いんだなと。3ボタン2ボタン、なんてどうでもよくてボタンなんてウェストの位置で1つ止まっていればよくて。

なんか、こう、デザインとかではない、「ピュアなもの」を感じましたね。

最初から、すごく重たいものを作っていただいたんですが、着ていて全然重さを感じませんし。

仮縫いもなしで、一発でここまできちゃうって言うのは、びっくりしましたね

(補足:Hさんにご注文頂いた2018年当時スタンダードラインには仮縫いが付いてませんでした。※現在は仮縫い付きです※)

本当に「えーーー」って思いました、本当に。

 

結構明確にリクエストをいただいたご注文でしたが、ご満足いただけましたか?

もちろん、満足でした。完璧だと思いました。

家に帰ってびっくりしたのがパンツの裾がモーニングカットのダブル仕様になっていたこと。

ウェブや一般的な知見では、あんなものはもはや失われた技術で、あんなものが出来る技術を持っている人はほとんどいない、みたいな。そんな情報が結構まかり通っている世界で。

それが、頼んでもいないのに、モーニングカットのダブルになっていることに心底驚いて。笑。なんだこれーと思って。すげーーーと思って、笑。

 

その後いかがですか?

週1くらいで着ています。それぞれのスーツを着ています。

 

じゃあ週に2回はペコラ銀座のスーツですね。周りの反応などはいかがですか?

そうですね。周りに着道楽がいないので、自己満足しているだけですけど、洗面所などで鏡を見るたびに「ああすげー、(スーツは)格好いいな」と。

ちゃんとコーディネートも考えないといけないなと思いますし、明日何着ようかなと思ったときは、天気予報を見て晴れそうだったらペコラのスーツを着ようかなと言う感じで、革ものの色を決め、シャツとタイを決めます。

それで起きてみて天気が変わっていると、朝いきなりバタバタしだすと言う 笑

 

これからペコラ銀座に来ようと思う方へのアドバイスをお願いします。

「とにかく早く作ったほうがいい」

「悩んでるんだったら早く!」ですね。これに尽きます。

今後の人生に対して、これがどれくらい価値のあることか。

回り道せずに最高のものの一つを若くして体験しておくと、自分なりの価値観、基準が構築されて、これが今後の人生にいい影響を与えると思う。

若人ほど背伸びしてペコラで作った方が良い。

早く作れば作るほど、とんでもない着道楽のモンスターができちゃうかもしれませんけど絶対に、早く作った方が良いと思いますね。はい。

 

お値段についてはいかがですか?

「絶対に安いと思います」

スタンダードラインしか作ってないですけどスタンダードは絶対に安いと思います。

それからオプションでバンバン上がっていくとか、そう言うのが一切ないのが、ものすごくわかりやすくて良いと思います。

 

・・・

実は、Hさん。今回のインタビューを受けてくださるにあたり、事前に自らのペコラ銀座やビスポークに対する想いや考えを「メモ」にまとめて来てくださっておりました。

そちらの、ありがたく素晴らしい「メモ」と、Hさんとの対面インタビューをもってこの度の記事を書かせていただきました。

Hさんのご趣味の話、スーツの話、どれを取っても見られる、「常に上を目指していく姿勢。」

常に常に、「更なる世界」を求めていながらも、それがごく自然体で、あまりにも「当然の姿」としてその人となりが滲み出るHさん。

人生を愉しみ、自らの意思で「進み続ける」強烈で純真なエネルギーをお持ちのとっても素敵なお方。

インタビューをしているこちらが元気と勇気を頂いてしまいました。

 

最後に、

Hさんより頂いたメモより、以下のお言葉を拝借し、HさんのMy Storyを締めくくらせていただきます。

 

私が考えるペコラ銀座の価値とは

「佐藤さんの採寸はまるで魔法。これを体験する事」

By Hさん

 

・・・

 

Hさん、この度はご協力を頂き、本当にありがとうございました。Hさんの今後のますますのご活躍とご発展を願い、心より応援しております。

時計のお話、コーヒーのお話、ダイビングのお話、そして新たなご趣味のお話を、是非また聞かせにいらっしてくださいね。

また、スーツのご相談、メンテナンスなど、「スーツとのお付き合い」に今後とも寄り添い、ペコラ銀座は末長くお供をさせて頂きます。


今後もお客様の素敵なMy Storyをご紹介して参りたいと思います。

どうぞ宜しくお願いいたします。